九谷焼を話してみよう

弊社が九谷焼の販売を生業として50年近くになろうとしています。 そしてこのホームページも含めインターネットでの販売も18年目となりました。伝統工芸が衰退産業という風に言われ始めたのはいつ頃なのでしょうか?日本がバブル景気に沸いていた頃、産業として末端であった伝統工芸業界もその恩恵を受けていたと諸先輩方の武勇伝では良く耳にする話でございます。ただ残念ながら私自身は体験も実感もしたことがない感覚なのはとても残念なことです。もちろんバブル景気のおかげで弊社も倒産を免れる恩恵はあったものの先代の知人の保証人の負債等、一田舎の零細企業にして大きな負債を抱えている中で決して楽な運営ではなかったと子供心に感じてました。

2度と経験したくない時代。

さて時が経ち、私自身がこの仕事に携わるようになり20年になります。その日、その日の資金繰りに怯え、崖っぷちギリギリを歩く日々が10年近く続いたでしょうか。今となれば良い経験とか修行とも言える日々でしたが2度と経験したくないのが本音です。正直、資金繰りがシビアな時は誰に相談しても解決しません。というよりも一人で耐えるしかないのが本当に辛いです。

一般的に目にする商売の成功事例は基本的には、まだ会社に余裕fがある状態での話が多いです。もっと言えば「倒産の危機から大逆転!」的な話は芸能人で成功するとかスポーツ選手として成功する的な確率的に低い話であり、むしろ結果論的に成功したから本が出ているというほうが正解だと思うのです。 

じゃあ、危機的な状況になったら手の施しようがないじゃないのとなります。

まさにその通り、あとは耐え抜くしかないんです。お金に換えれるものをすべてお金に換え支出を極限までに減らした中で利益率の改善と新規市場を開拓するほか方法はないのです。もしくは自己破産ですね。昔、友人に仕事について相談を受けたことがあります。「この仕事続けていく自信がないな、、、」という友人、私の答えは「廃業できるならまだ幸せ」ゼロに戻せるならゼロに戻せばいいのです。大きなマイナスは前に進む事を止めてもゼロには戻りません。

運が良かった。

さて、弊社、本当に運良くインターネットという媒体と出会い、伝統工芸品の売り上げが下がり実店舗での売り場面積が縮小されていく状況にも恵まれインターネットの特性である場所・時間・距離の制約がない販売方法が功を奏し全国よりご注文を頂き着実に販売数を増やすことができました。

初めてのお客様

今でも鮮烈に覚えているのですが最初のご注文は東京の淑女の方でした。「九谷焼が好きだけど都内の百貨店であまり買えなくなり、なんとなくインターネットで探した時にあなたのお店を見つけたの」そんなお言葉がご注文時に添えられていました。そして初めてのネットでのご注文品を出荷、数日後その淑女の方から弊社宛に荷物が届きました。内心、返品なのかとドキドキして箱を開けると、そこにはミカン数個とおせんべいが数枚、そしてお手紙が一通同封されていました。 "インターネットで注文した九谷焼が届きました。本当に素敵な作品に感激しています。作品に感激した以上にこれからインターネットでいつでも九谷焼を選び買えることが嬉しくて、何か御礼と思いテーブルの上にあったものを詰めました" このお客様のご注文が私の原点なのは間違いありません。そして18年続けられているのは日々出会う素敵なお客様皆様のおかげでもあります。

本当に長い前振りですみません。

石川県能美市という場所(金沢市から車で1時間、小松空港から車で20分)交通の便が決して良いとは言えない場所にショールームも持たず販売させて頂き全国の皆様と出会えることを心の支えとして続けてくることができました。これまでご愛顧頂きました皆様に心より感謝申し上げます。 実は今回、書きたいことは前述のような弊社の歴史的な話ではなく(ものすごく長い前フリ)伝統工芸を販売する者としての考えが、ここ数年で大きく変化したことを自分の備忘録として書きたいと思ったのです。

今の伝統工芸について思うこと

前述にもあるように衰退産業と言われる伝統工芸(これ実は第三者ではなく当事者の思い込みのような気がします)その中で売り上げを増やし業界を元気にすることが私たちのような販売する者の使命だと思っていました。この考え方に最近、変化が起きたのです。実はネット販売が普及した中で販路が自然と増え伝統工芸も販売数的には大幅に増えてきています。もう衰退していると言えないと思ってます。ただこの販売増加の裏では作り手やメーカーにこれまで感じたことのない格差が生じています。誰もが目にすることができるネット販売では「売れる=人気作品」が一目瞭然です。

ここにはプロのバイヤーの知識など関係なく売れているものを仕入れて売るという販売方法が成立します。すると人気作品の作り手・メーカーには注文が集中し本来の生産数を遥かに超え製造現場がパンクする状態となります。そして注文残が増える、納品が遅れる、注文は増える、処理が遅れる、作り手が疲弊する、売れる事による負のスパイラルに陥っている現場を目にする機会が増えてきました。 

売れても売れなくても幸せになれない業界?

思ったのは、伝統工芸は売れても売れなくても幸せになれない業種だということ、ならばこの業界の幸せってなんだろうと考えるわけです。そもそも幸せの価値観というのは人それぞれであり、年収200万でも幸せという人、年収1000万あっても満足できない人、そんな個人差の中では金銭的なものが幸せの尺度ではなく、むしろ報われない仕事に追われたり、努力が空回りしていることで本来の幸福度を削っている感があるのが伝統工芸業界なのだと思うのです。 

働く人が金銭的な希望的数値を基に自己の生産数量、作品価値を決定すること、そしてなにより、その仕事の質と金銭的な数値のバランスが良好か否かを重要視することで働き方が変わってくると思います。私たち売り手はその作り手の考えを共有し販売数量や販売先の調整を行うこと、売ることだけを考えていた今までの考えではなく売らないことも考えるという部分がここ数年の考えになります。

産地のど真ん中に会社を構え販売には最も有利な立場である私たち産地問屋が担う使命、それが販売作品の均等化、決して全体の売り上げを下げるということではなく人目に触れる人気作品をより多く見出すことを優先し生産先の一極集中を緩和することが伝統工芸において三方良しの考え方なのだと思うのです。 

過去の負の遺産を忘れない。

バブル期、伝統工芸は生産限界を超える生産という一線を超えました。それは質の低下であったり粗悪品の横行を招き伝統工芸のイメージを大きく損ないました。近年、市場がグローバル化したことで新たな伝統工芸ブームの波が起きつつあります。その時、同じ過ちを繰り返さずいかに価値を高めることができるのか?そんなことを考える今日この頃です。